際立つお客様(2)

前職の紳士服業界から離れて何年かたった頃、
妹と代官山に行く途中、渋谷駅で向かいのホームに、見たことのある紳士を発見。
派手めのハットとチーフをあわせ、手にはスーツ。
あの田園調布のおじいさんだ。
毎日都内近郊の紳士服売り場を歩き、
一日一着ペースでスーツを作る。
妹は遠目から「すごいおしゃれじゃん」と言うが
個性的な方ではあった。
今もまだスーツを買っているのだろうか。

販売は応援のみで、各店舗に一時的にしか立っていない。
今思い出せるのは、どこにでも出現するそのおじいさんなど、ものすごく買ってくださるお客様。

でも、1着だけで印象を残す人もいる。
色違いでどっちがいいかな?と迷うお客様を接客し、股下のみの調整で翌日出来上がり。
翌々日、「君の選んでくれたスーツよかった、見せにきたよ」
と来てくださった。
「すごく素敵です!」
色も合っていた。
股下もちょうどよかった。80あったが79にした。
AB7体のお客様だった。ガタイがよかった。
痩せすぎ、太り過ぎはスーツは似合わない。
ガタイはいいほうがいい。
できれば背もあったほうがいい。

お金もガタイも気遣いも関係なく目立つのが、ネーム入れ。
何食わぬ顔で書いていただいたネーム希望欄には、
愛する人の名前や、メッセージ、マークなどもある。
名入れ担当の人はなんでも出来る。
珍しいものはみな大喜びだ。