バカ正直

バカがつくほど正直と言われてきた。
たぶん私はバカなんだろう。

中学生くらいまで、物語すら本当の話だと思っていた。
小鳥やブタがアヒルが、おしゃべりをしたり、家を建てている世界がどこかにある、
と本気で思っていた。
本の読みすぎらしかった。

テレビがなかったことも原因かもしれない。
お隣の家で初めてテレビを見たとき、
「箱の中で黒い服を着た小さなおじさんたちがケンカしている」
と泣き叫んで家に帰った。

「ウソ」という概念自体が抜けていた。

ようやくフィクションの意味がわかりかけてきた頃、
サタジットレイの「大地のうた」3部作の超大作を観た。
母と姉と岩波ホールで。
まさかカメラがまわっているなんてとても思えなかった。
観終わっても立ち上がれないほどだったのは、疲労か、感動か…
内容はあまり覚えていなが、覚えているのは幼い姉弟の会話だ。
見なれないものを見つけ「これどうしたの?」「盗んだの」となんのためらいもなく言うのだ。

「大地のうた」は好きな映画とたやすく呼べないほど、スケールが大きかった。