春の鳥(3)

昨年の保育園の運動会は忘れられない思い出となった。

卒園する年長組の子たちは、全員で大縄跳びをするという。
全員では無理だろう。障害児が2人いる。
2人が飛ばないのは見て見ぬふりをしよう、
と思っていたら2人の名前がそれぞれ呼ばれた。
1人は歩くのもやっとだ、またぐだけでいい。
なんとかまたぐことができた。
それでいい、それでいい。
もう1人はダウン症の子だ。ニコニコして登場し、縄の真ん中に立つ。
踊ることが大好きで 自分の出番じゃなくてもずっと踊っている天真爛漫な子だ。
なんとか跳んでほしい。
全員がそう思った。
シーンとして物音一つ聞こえなくなった。
縄が大きく円を描き、皆息を飲む。
偶然か、初めてか、跳べた。
割れんばかりの拍手、思わず皆目が潤む。
一回跳べることが、あんなにも感動だなんて。

次の日お母さんに「凄い、感動した!」と伝えたら、
お母さんは見そびれた、と笑っていた。
そんなもんだ。

知らないところで問題もあれば、
知らないところで感動もある。