オバケ

オバケなんてないさ、オバケなんてウソさ。
超常現象信じるか信じないか、と言えば信じる方かもしれないが、
なぜオバケが悪いことをすることになっているのだろう。
オバケだって、ただ現世をちょっと見にきただけだ。
私たちが来世を少し見たくなるように。

幽霊は見た記憶はないが、
子どもの頃、亡くなった犬の息遣いを家族全員が1ヶ月以上聞いていた。

実家の初代セントバーナード
家族同然かそれ以上だった。
大型犬は夏、ハァハァと息が荒い。
亡くなったあとしばらくして、
夜になると、ハァハァと聞こえた。
姿は見えない。
名前を呼ぶと近付いてきたし、
庭を移動しているのもわかる。
夏の間じゅうずっとそれが続き、
最初はみな驚いたが、だんだん当たり前になった。
私達は、「まだいるの?」
「もう心配しなくてもいいよ。
次のワンちゃんが家を守ってくれるから大丈夫だよ」
などど話しかけたりして、息遣いとともに過ごした。

二代目セントバーナードもやってきて家族の一員となり、
秋になるころかいつの間にか聞こえなくなっていた。
もういなくなったね…と少し淋しくなったものだ。