ベルじいさん

小学生の頃、姉妹でそれぞれの部屋とは別に寝る部屋があって、
下の妹がまだ小さい頃は、姉妹3人で一緒に寝ていた。
毎日8時には強制的に寝なくてはならない。
全く眠くなかった。
私たちは毎日聞いていた「おはなしでてこい」(NHKラジオ)の真似をして、
暗闇の中、姉妹交代で私たちの「おはなしでてこい」(創作話)をやっていた。

私の話はキレイゴトの世界。
お花畑で寝転がってウトウト眠ってしまい、麦わら帽子が飛んでいってしまいました、その帽子を追いかけて…といった具合。

妹の話はキタナイ話ばかり。
ドブにウ○コが流れてきて…などと言って、妹は1人で「ギャーハッハッハ」と笑い転げていた。
全然面白くなかった。

姉の話は面白過ぎた。特に「ベルじいさん」シリーズが最高に傑作だった。
「ベルじいさん」が始まると、私たちは歓声ををあげ、その奇想天外なストーリーに心踊らせて聞き入った。
ベルじいさんは屋台のラーメン屋をやっている。
決め台詞は「コンチクショーメ!」
ワガママで横暴で下品極まりなかったが、愛すべきじいさんだった。
詳細な記憶はあまりないが、覚えていたとしても、下品すぎてお話できない。
一つ言うとすれば、ベルじいさんはオチン○ンが7メートルもあり、パンツに折り畳んで入れていたのだ。

私たちは私たちの「おはなしでてこい」で、いつも寝不足だった。
つい盛り上がり過ぎて親に見つかり、
「いつまで騒いでるの!」と怒られる。
話をしながら寝てしまったり、
話をしながら1人で盛りあがり、みな寝てしまっていることも。
反応がないと「みんな聞いてる?!」
シーン…
なんだ、みんな寝ちゃったか、私もそろそろ寝るか…とそれぞれ眠りにつく。

最後の「ベルじいさん」の時もそうだった。
今日で完結する、と姉は意気込んで、最終回にふさわしいとびきりの最後が待っていたはずだが、長すぎた。
私たちは必死で起きていたが、睡魔に勝てず、妹、私と脱落して行った。
翌朝、姉は話すことに夢中でみな寝てしまっても話し続けていた、
全力を出し切ったので、すぐにもう一度やり直すことはできない、また今度、と言っていた。
ずっと楽しみにしていたが、それから部屋替えがたびたび行われ、
ついに話さずじまい聞かずじまいだった。

そんなワクワクしていた夜は楽しい思い出だ。
子ども達よ、子ども達だけで寝よう。