感謝

ありがとう、心の中で言う。

急激に意識が薄れながら、
ダイゴ(医師)の顔が見え、
「よろしくお願いします」と声をふりしぼる。

手術中、仕事の夢を見ていた。
移転前の仕事場で、
太陽が燦々としていて眩しかった。

眩しくて目を開けられないでいると、
大事で呼ばれて、目を覚ました。
無事終わりました、と聞く。
炭酸ガスで喉がイガイガだ。
もう卵巣と卵管は、切られらたか焼かれたかしたのだ。
一瞬、喪失感に襲われる。

癒着が強く、盲腸癒着も剥がしたそうだが、
開腹は免れた。
夫はドロドロの塊のようなものを、
見せられたらしい。
取ってよかったと。
お腹に穴が4箇所、こんな穴だけで、
いろいろな処置をしていただけた。
医学は進歩している。
医者もすごい。
前の方の5時間の手術後、
間髪入れずに、3時間の手術。

通常は開腹手術と思われたが、
腹腔鏡できます、と即答出来る自信、
自分の仕事にそんな自信を持てるだろうか。
入院中、気がついたが、
最近の医者は美男美女が多い。
天は二物を与えていた。
看護師も美人揃いでみな天使に見え、
ボーッとしていてた。

寝てばかりいては、
また癒着しかねないので、
早期離床だ。
毎日清掃があるので、
そのたびに雑誌のある面会ロビーへ、
ヨタヨタと歩く。
ヨタヨタのまま雑誌を読破。
いつも読まない雑誌も勉強になる。
ダウンジャケットの汚れは食器洗剤で取ること、など。

同室の隣人たちは、個性派揃いだった。
あと数日したら、事件でもおきそうだった。
みな一刻も早い退院を望んでいた。
みな一生懸命生きていた。

勤務先には面会を遠慮してもらい、
家族と姉妹のみに面会。

上の妹とは、約15年前に有楽町西武に行って以来、
2人だけがなかったことに気づく。
妹たちは時間を合わせるように依頼。
下の妹は、刑事事件がなければ来れるとのことだったが、音沙汰なく、
上の妹が1人だったが、思いの外、マシンガントーク
途中仕事の電話に対応する妹が、まともで驚く。
当り前だ。
変わり者の妹だが、あのまま成長していないはずがない。
自分で服を選べなかった妹も、
今は大胆柄のワンピースなんか着ている。

頑なに金品を拒否していたが、
姉が持ってきたミニ花束。

お腹がすいて、買いに行ったプリンの容器を花瓶にする。

1週間後自宅へ。

家は片付いていて、
家事も心配だったが、分担表で協力、
二女も、「私も火事を頑張りました」と日記に記入。

病院の方々に感謝
勤務先に感謝
友人知人に感謝
家族に感謝
生きていることに感謝