最後のクリスマス

クリスマスの朝は5時から始まる。
クリスマスツリーに駆け寄り興奮する子供達、
外はまだ暗いよ…。

30年ほど前のクリスマスの朝は日がすっかり登りきっていた。
…プレゼントがない。
妹が、「サンタクロースが来てない!!」
と騒ぎ、母に報告した。
母は飛び起きて、ぐっすり寝ている父を叩き起こす。
「忘れてた!今日クリスマスよ!!」
ア然とする私たちのほうをキッと向いて「早く寝なさい!」
私たちは何がなんだかわからず、あわててベッドに潜りこむ。
母のドン、ドンという足音が聞こえてきた。
いつも早く起きろ、という母が「寝なさい!」と鬼の形相だ。
薄目でみていると、
母はプレゼントの箱を4人分抱え、
私たちの足元めがけてバーンッ、ボーンッと乱暴に放り投げているではないか。
確かにだんだんサンタクロースの存在を怪しみ始めていた頃だったが、
まだ小さい妹もいたので、信じなければならなかった。
ずっと前、母が「今からサンタクロースに電話する」
と私たちの前で電話したことで、
サンタクロースの存在は確信的なものだった。
あれはなんだったっんだろう。
(おそらく通販だった)
薄目の中、いろんなクリスマスの思い出が頭の中をグルグルと回った。

姉も妹も薄目で見ていたはずだが、
そのことは誰も一言も言わなかった。
プレゼントも何だったか覚えてないが、
みな黙ってその日を過ごした。
一年間黙っていたが、やはりもうサンタクロースはこなかった。
その後もずっと黙り続け、
つい最近、やっと姉とそんな話をした。