二度目の休暇

産後の辛い記憶はほとんど長女の時である。
一度辛い思いをすると、慣れる。辛い思いは繰り返さない。
二度目の育児休暇、前半は怠惰を極めた。
一度目で激ヤセしたため、
二度目は一生懸命食べていたら、今までになく太ってきた。
もともと痩せすぎていたので、
ちょうどよかったかもしれないが、
いまだに食べっぷりは健在だ。
K君は単身赴任中だったが、思いの外楽だった。
シングルマザーは楽だった。

育児休暇中盤、
長女が40度を超える熱を出す。熱は1週間下がらなかった。咳も激しく、呼吸もひどく苦しそうだった。
起き上がることもできず、「トイレ…」と言われると、急いでビッグより大きいサイズのオムツをはかせ、用を済ます。
使わなくなっていたベビーカーですぐ近くの小児科へ行っていたが、
聴診器をあてることもなく、
熱さましの座薬は一日6個まで入れて大丈夫、などと言う。
(ヤブ医者だった)
夜中、辛そうな呼吸はもはや寝息ではなく、明らかにおかしい、とネットを調べる。
胸の音を聞く。ポチャポチャと音がした。水泡音は肺炎に違いない。
レントゲンのある医者を探す。
翌朝、タクシーを呼んで到着。
心音を聞くなり、頼まずしてレントゲンへ。
予想どうり肺炎だったが、血液検査の結果は悪くなく、自然治癒力か、もう回復に向かうだろうとのことだった。

長女は薬が嫌いだ。
今は医者に頼んで特別に錠剤にしてもらっているが、
粉薬がだめだ。
甘いものが嫌いで、薬の甘みが苦手なのだ。
私なんて甘いものがないと小児用バファリンをなめていたというのに。

薬に苦労している話をすると、
お医者さんは、
「よし、私が飲ませてあげよう」
と言ってくださった。
私がハーゲンダッツチョコ(薬の味が1番誤魔化せる。)を買って、小児科に戻ると、飲ませてくれた。
ジスロマック3日で完治。

ずっと次女はそばにいてニコニコしていて、癒してくれた。
移動中はおんぶにだっこ。
小児科からの帰り、次女がだんだん熱くなってきた。
家に着く頃には、グッタリしている。目も口もだらんと下がり、呼吸が変だ。
ずっとそばにいたからうつったのだ。
次の日検査すると、即入院となった。
手遅れにならなくてよかった。

私も付き添入院する。
心配で心配で気持ちが張り裂けそうだった。
「必ず治る」と言い聞かせ、
ずっと小さな次女を見ていた。
ずっと見ているだけだった。
することがなかった。
付き添いにも食事が出た。
夫も単身赴任で長女も義母宅へ預けられ、
もともと仕事も休んでいるから気楽である。
そして現代医学の力で、みるみる次女は元気になった。
こわばった顔が、微笑み、ケタケタと笑うようになった。
私もすっかり安心し、食べては寝てばかり。
また怠惰になった。

退院後2ヶ月ほど大量の薬を飲んだ。
長女のような拒否反応はない。
薬は飲むものだ。
なぜ飲みたくないのだろう。

やっと投薬治療が終わった頃、
また入院することになる。
またしても付き添い入院したが、
その入院は人生観の根本を揺るがす体験となった。